介護職は腰痛予防に役立つスキルが不可欠

ヘルパーや介護福祉士といった介護職の仕事では、利用者の日常生活のサポートが中心。起床から食事さらに入浴や排泄等まで、日常生活に必要なあらゆるサービスを提供する。このため、直接身体を介助するシーンが数多くあり、介護職の心身への負担もハードになる傾向が高いと言える。実際に介護の現場では、腰痛に悩む介護職は多いものだ。そこで、スタッフの負担を軽減するため、ノーマルリフティングケアの考えを取り入れる介護現場も目立つ。

この考えを端的に言えば、介護者の腰痛を回避する予防技術のことを指す。介護を受ける側の安全性はもちろん、介護サービスを提供する側の負担についても、軽減を目指す発想である。まず腰痛を予防するには、正しい姿勢で介助することが大事。そのうえで、最小限の力で最大限の効果が得られるように、介助の動作を心がける。例えば介助で利用者を持ち上げる動作をするならば、一方の足を斜め前に出しながら足幅を広げ、基底面積を大きくして安定性を確保。重心を低く保って利用者に近接し、テコの原理を応用して持ち上げ、腰へ負担がかからないように工夫する。

それと平行して、介護を受ける利用者の安全性にも注意が必要である。介助で利用者を持ち上げるなら、その障害や心理状態といった心身の状況を見極め、適切な方法を選択することが求められる。介助の前にはこれから行う動作を十分に説明し、利用者の同意を得ることも忘れてはならない。利用者の尊厳を守ると同時に、心身の準備を促すためだ。そして介助では関節や筋肉の動きといった、人間本来の自然な動きを阻害しないことも、利用者の負担を減らす大切なポイントになる。ノーリフティングケアは、介護士が覚えておくべき腰痛予防と言えるだろう。